【昭和の寒村で何度も死ぬ】『虧月の夜』クリア感想・レビュー|因習×タイムリープホラーADV

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『虧月の夜』をクリアした。

昭和の寒村。
閉ざされた村。
古い因習。
そして、
死ぬたびに同じ時間へ戻されるタイムリープ。

この時点で、
もうかなり好きなやつだった。

おいらは普段、
RPG黄金期キッズを名乗っている。

だからブログの中心に置いているのは、
RPGやS・RPG、
そしてファンタジー作品だ。

でも、
ゲーム人生の横道には、
どうしても無視できないジャンルがある。

閉じた村で起きる惨劇。
逃げ場のない空気。
少しずつ真相に近づいていく不穏さ。

『かまいたちの夜』やサウンドノベル系の空気を通ってきた人間としては、
こういう作品にはどうしても反応してしまう。

今回は、そんな『虧月の夜』をクリアした感想を書いていく。

ネタバレありで語るので、未プレイの方はご注意を。

目次

『虧月の夜』基本情報まとめ

項目内容
タイトル虧月の夜
対応機種Nintendo Switch
ジャンルタイムリープサバイバルホラーADV
発売日2026年1月29日
価格5,280円(税込)
CEROD(17才以上対象)
この記事の内容クリア後の感想・レビュー
ネタバレあり

『虧月の夜』は、
昭和13年に起きた大量殺人事件をめぐる物語だ。

舞台は、
閉鎖的な農村。

主人公は、
何度も殺されながら、
同じ時間を繰り返す。

そして、
村の因習や隠された秘密に迫っていく。

昭和。

寒村。

大量殺人事件。

因習。

タイムリープ。

この時点で、
もうだいぶ濃い。

おいらの中の
「こういうの好きセンサー」が、
かなり反応するタイプの作品だった。

昭和の寒村、因習、タイムリープ。もうこの時点で好きなやつだった

こういう作品に弱い理由は、
たぶんはっきりしている。

おいらは、
「閉じた世界」が好きなのだと思う。

広い世界を旅するRPGも好きだ。

でもその一方で、
逃げ場のない場所に閉じ込められて、
その中のルールを少しずつ理解していく物語にも弱い。

村。

家。

血筋。

噂。

沈黙。

見てはいけないもの。

知ってはいけないこと。

そういうものが、
小さな場所にぎゅっと詰まっている。

広い世界を冒険するのとは違う。

狭い場所の奥へ、
どんどん潜っていく感じ。

おいらは、
あの感覚が好きなんだと思う。

『虧月の夜』は、
まさにそのタイプだった。

最初から世界が広いわけではない。

むしろ、
狭い。

閉じている。

息苦しい。

でも、
狭いからこそ濃い。

誰かの言葉が引っかかる。

村の空気が重い。

ちょっとした違和感が、
あとから意味を持ってくる。

しかも、
この作品にはタイムリープがある。

一度見た景色を、
もう一度歩く。

一度聞いた言葉を、
別の意味で受け取り直す。

前は気づかなかったものに、
次は気づく。

この「同じ場所なのに、見え方が変わっていく」感じがいい。

RPGで新しい町に着いたときのワクワクとは違う。

でも、
これはこれで探索だ。

地図を広げる探索ではない。

村の奥。

人の奥。

事件の奥。

そこへ潜っていく探索。

だから、
『虧月の夜』はRPGではないけれど、
おいらの中の冒険心にはちゃんと触れてきた。

剣も魔法もない。

レベルも上がらない。

でも、
同じ夜を繰り返すたびに、
プレイヤー側の理解だけが少しずつ上がっていく。

それが、
かなりおいしかった。

この作品を遊び始めた時点で、
おいらはもう思っていた。

ああ、これはたぶん、
自分の好きなタイプの暗さだな、と。

何度も死んで、少しずつ真相に近づく構造がよかった

『虧月の夜』でよかったのは、
やっぱりこの構造だ。

死ぬ。

戻る。

また進む。

また死ぬ。

そして、
少しだけ知る。

一気に真相へたどり着くわけじゃない。

むしろ、
何度も失敗する。

間違える。

殺される。

どうしようもない結末を見る。

でも、
そのたびに情報だけは増えていく。

あの人は、
あのとき何をしていたのか。

あの言葉は、
どういう意味だったのか。

あの場所には、
なぜ近づいてはいけなかったのか。

最初はただ怖かったものが、
少しずつ意味を持ち始める。

ここがよかった。

死ぬことが、
ただのゲームオーバーではない。

死ぬことで、
次に進むための材料が増える。

だから、
失敗しているのに、
前に進んでいる感覚がある。

これはかなり好きだった。

RPGで言えば、
レベルが上がるわけではない。

装備が強くなるわけでもない。

新しい魔法を覚えるわけでもない。

でも、
プレイヤーの中にだけ、
確実に経験値がたまっていく。

この感覚があった。

村のことを知る。

人の事情を知る。

事件の輪郭を知る。

そして、
前の自分なら選べなかった行動を、
次の自分なら選べるようになる。

これが、
タイムリープものの気持ちよさだと思う。

ただ同じ時間を繰り返すだけなら、
たぶん退屈になる。

でも『虧月の夜』は、
繰り返すたびに、
同じ夜の見え方が少し変わっていく。

怖いだけだった村が、
だんだん読めるようになる。

怪しいだけだった人物に、
別の事情が見えてくる。

何気ない言葉が、
あとから刃物みたいに戻ってくる。

その積み重ねが、
かなりよかった。

死んで終わりじゃない。

死んだから、
次は違う場所を見に行ける。

死んだから、
次は違う言葉を疑える。

死んだから、
次は少しだけ真相に近づける。

この構造は、
ホラーとしても、
ミステリーとしても、
かなり相性がいい。

怖さで引っ張る。

謎で引っ張る。

そして、
ループで少しずつ理解を更新させる。

『虧月の夜』は、
何度も死ぬゲームだ。

でもその死は、
ただの終わりではない。

真相へ近づくための、
ひとつひとつの足跡だった。

主人公は、理不尽な夜の中で“生きること”を見直していく

主人公は、
現代の受験生だ。

受験勉強に悩んでいる。

大変さに嫌気がさしている。

自暴自棄にもなっている。

正直、
現代にいる時点の主人公は、
人生に前向きな人間ではない。

でも、
今回のタイムリープに巻き込まれたことで、
その見え方が変わっていく。

飛ばされた先は、
昭和の寒村。

今のように便利でもない。

安全でもない。

自由でもない。

ただ生きることですら、
現代とは比べものにならないくらい重い時代だ。

しかも主人公は、
そこで理不尽に巻き込まれる。

村人たちから、
まともに扱われない。

話も通じない。

ここでは語れないような、
悲惨な目にも遭わされる。

何度も死ぬ。

何度も戻る。

普通なら、
心が折れてもおかしくない。

でも主人公は、
そこで完全には絶望しない。

現代に戻りたい。

それは当然ある。

自分の目的を優先して動く。

それも当たり前だ。

でも、
それだけでは終わらない。

ヒロインの茜を助けようとする。

自分がある意味、
体を乗っ取ってしまっているとも言える、
ミツルのことも考える。

自分が助かればそれでいい。

そういう動き方だけはしない。

ここがよかった。

最初から立派な主人公ではない。

現代では、
目の前の受験に押しつぶされそうになっていた。

でも、
過去の理不尽な夜に放り込まれて、
主人公は少しずつ知っていく。

自分がいた現代が、
どれだけ恵まれていたのか。

生きることが、
どれだけ当たり前ではないのか。

そして、
自分の人生だけを見ていればいいわけではないことを。

『虧月の夜』は、
死に戻りのホラーADVだ。

でも主人公の物語として見ると、
これはかなりまっすぐな成長の話でもある。

逃げたい。

戻りたい。

助かりたい。

その気持ちはある。

でも、
その中で誰かを見捨てない。

自分の目的だけに閉じこもらない。

理不尽な時代に放り込まれても、
近しい人のことをちゃんと考える。

おいらは、
そこに主人公の魅力を感じた。

強い主人公ではない。

最初から覚悟が決まっているわけでもない。

でも、
何度も死に、
何度も傷つきながら、
それでも人を思える。

そこに、
この主人公の強さがあったと思う。

ホラーというより、“逃げ場のない不穏さ”がずっと続く

『虧月の夜』は、
ホラーADVではある。

でも、
おいらが強く感じたのは、
びっくりさせる怖さではなかった。

急に何かが出てくる。

大きな音で驚かせる。

そういう怖さというより、
もっと嫌な怖さだ。

話が通じない。

まともに扱われない。

最初から、
こちら側が低く見られている。

この村の人間たちは、
基本的に主人公へ高圧的だ。

やさしく迎えてくれるわけではない。

こちらから自由に話しかけて、
少しずつ仲良くなっていくような空気もない。

むしろ、
会話の入口からして閉じている。

主人公が何かを知ろうとしても、
まともに取り合ってもらえない。

聞きたいことがあるのに、
言葉が届かない。

説明してほしいのに、
説明されない。

知りたいのに、
知る権利すら与えられていないような感覚がある。

これがかなりしんどい。

怖い怪物がいるから怖い、
というより。

この村そのものが、
主人公を人間として扱っていない感じが怖い。

閉鎖的な村。

古い因習。

生まれや血筋で決めつけられる空気。

そこに放り込まれて、
こちらの言葉は通じない。

この息苦しさが、
ずっと続く。

もちろん、
全員が同じように見えるわけではない。

主人公の兄のように、
一見すると優しさや近さを感じる存在もいる。

だからこそ、
余計にややこしい。

完全に敵だと割り切れない。

でも、
安心して預けきれるわけでもない。

この村では、
誰かの言葉をそのまま信じることが難しい。

ただ、
その理由は「みんなが優しそうで怖い」からではない。

むしろ逆だ。

最初から圧が強い。

まともに会話が成立しない。

主人公が村のルールの外側に立たされている。

その状態が、
ずっと不穏なのだ。

『虧月の夜』の怖さは、
派手な脅かしよりも、
この通じなさにあると思う。

話せない。

聞けない。

わかってもらえない。

なのに、
死はすぐ近くにある。

この村では、
言葉より先に運命が迫ってくる。

その逃げ場のなさが、
おいらにはかなり刺さった。

アドベンチャーとして遊びやすかったかどうか

アドベンチャーゲームとして見ると、
『虧月の夜』はかなり遊びやすかった。

ここは、
素直にありがたかった。

おいらは、
本質的にはアドベンチャーゲームが得意な人間ではない。

広い場所を歩き回って、
あちこち調べて、
誰かに話しかけて、
フラグを探していく。

そういうタイプだと、
わりと途中で気力が削られる。

「次、どこ行けばいいんだ?」

「何を調べ忘れてるんだ?」

「誰に話せば進むんだ?」

この状態になると、
物語を楽しむ前に、
ゲーム側との格闘になってしまう。

でも、
『虧月の夜』はそこまで迷わなかった。

基本的には、
物語を読み進めていくタイプのADVだ。

選択肢はある。

分岐もある。

死ぬこともある。

でも、
自分で村中を歩き回って、
総当たりで正解を探すような感覚は薄かった。

だから、
物語に集中しやすかった。

ここはかなり大きい。

特にこの作品は、
村の空気や因習、
死に戻りの構造を味わうゲームだと思う。

だから、
操作で詰まるよりも、
話の流れに身を置ける方がいい。

その意味では、
かなり相性がよかった。

ただし、
何も考えずに読んでいればいい、
というわけでもない。

選択肢によっては、
当然死ぬ。

「あ、そっち行ったらダメなのか」

「この言葉を選ぶと、こうなるのか」

そうやって、
失敗しながら覚えていく。

でもその失敗が、
そこまで理不尽には感じなかった。

むしろ、
この作品の場合は、
死ぬことも体験の一部になっている。

死んで、
戻って、
次は違う選択をする。

その繰り返しが、
ちゃんとゲームの構造として成立していた。

だから、
死んでもあまり嫌にならなかった。

もちろん、
似たような場面を見返すことになるので、
そこに少し重さを感じる人はいると思う。

でも、おいらの場合は、
許容範囲だった。

むしろ、
「またこの夜に戻ってきた」という感覚が、
作品の空気に合っていた。

テンポも悪くなかった。

読み進めやすい。

止め時も作りやすい。

少しずつ進めても、
ちゃんと話に戻ってこられる。

ここは、
忙しい中でゲームを遊ぶ人間としては助かる。

『虧月の夜』は、
アドベンチャーとして難しすぎる作品ではなかった。

でも、
ただ眺めるだけの作品でもなかった。

読む。

選ぶ。

死ぬ。

戻る。

少しずつ理解する。

その流れが、
かなり素直に入ってきた。

おいらみたいに、
普段はRPG寄りの人間でも、
最後まで進めやすいADVだったと思う。

真相は気になった。でも、すべてがひっくり返るほどではなかった

『虧月の夜』は、
真相が気になる作品だった。

この村で何が起きているのか。

なぜ主人公は殺されるのか。

誰が、
何のために、
この惨劇を起こしているのか。

そこを追いかける力は、
ちゃんとあった。

だから最後まで読めた。

ただ、
正直に言うと。

真相にたどり着いた瞬間、
物語全体の見え方がひっくり返るほどの衝撃はなかった。

「あの場面は、そういう意味だったのか」

と、
過去のシーンを全部見返したくなるほどではなかった。

ここは、
少し物足りなかったところでもある。

真犯人の存在。

事件の背景。

村に隠されていたもの。

それらは、
きちんと物語の答えとして用意されている。

でも、
おいらの中では、
度肝を抜かれるタイプの真相ではなかった。

なるほど。

そういう話だったのか。

そう受け取る感じだった。

悪くはない。

むしろ、
最後まで読ませるだけの力はある。

でも、
鳥肌が立つほどの反転や、
しばらく動けなくなるような余韻まではなかった。

このあたりは、
少し正直に書いておきたい。

『虧月の夜』は、
雰囲気が強い。

昭和の寒村。

因習。

死に戻り。

まともに会話が通じない村人たち。

この空気そのものには、
かなり引っ張る力があった。

でも、
真相そのものの切れ味は、
おいらの中ではそこまで鋭くなかった。

最後まで気になった。

でも、
最後で全部持っていかれたわけではない。

この距離感が、
かなり正直な感想だ。

真犯人は順当。でも、狂い方にはちゃんと魅力があった

ネタバレ注意!

『虧月の夜』の真犯人は、
遠井 虧だった。

正直、
ここはある意味で順当だったと思う。

まったく予想外の人物が出てきて、
「お前だったのか」とひっくり返されるタイプではない。

むしろ、
物語を追っていけば、
最終的にそこへたどり着くのは自然だった。

だから、
真相そのもので度肝を抜かれたかと言われると、
そこまでではない。

ただ。

それでつまらなかったかというと、
そうではなかった。

遠井 虧は、
良くも悪くも狂っている。

そして、
その狂い方にはちゃんと魅力があった。

静かに笑っている。

言葉は落ち着いている。

でも、
その奥にあるものが、
明らかにまともではない。

派手に叫ぶ狂気ではない。

暴れ回るタイプの怖さでもない。

むしろ、
理屈があるように見えるからこそ怖い。

自分の中では、
すでに答えが出ている。

その答えに従って、
人の命も、感情も、運命も、
平然と踏み越えていく。

そういう怖さがあった。

おいらは、
真犯人の意外性にはそこまで驚かなかった。

でも、
遠井 虧というキャラクターの歪み方には、
ちゃんと引っかかった。

順当な犯人。

でも、
薄い犯人ではない。

むしろ、
「この物語の犯人はこの人でよかったんだろうな」
と思えるくらいには、
作品の空気に合っていた。

昭和の寒村。

因習。

血筋。

閉じた世界。

その中で、
遠井 虧の狂気はかなり自然に馴染んでいた。

だからこそ、
余計に嫌だった。

異物としての犯人ではない。

この村の闇から、
ちゃんと生えてきた犯人だった。

そこは、
かなり良かったと思う。

ただ、
もう一段だけ言うなら。

真相で世界がひっくり返るほどの衝撃はなかった。

「あの場面、そういう意味だったのか」と、
全部を見返したくなるほどでもなかった。

でも、
順当にたどり着いた先に、
ちゃんと狂った魅力を持つ犯人がいた。

おいらの感想としては、
その距離感が近い。

大どんでん返しではない。

でも、
犯人としての存在感はあった。

遠井 虧は、
そういう真犯人だったと思う。

ネタバレあり:タイムリープの本当の原因について

ネタバレ注意!

ここからは、
物語の核心に触れる。

真犯人は、
主人公の兄だった。

ただし、
ここは少し整理しておきたい。

兄が犯人だったのは、
あくまで”三十人殺し”事件についてだ。

過去へのタイムリープそのものを、
兄が直接起こしていたわけではない。

この作品で起きていた時間の繰り返し。

それは、
村で理不尽に犠牲になった忌み子たちによるものだった。

祈りだったのか。

願いだったのか。

それとも、
呪いだったのか。

たぶん、
その全部だったのだと思う。

救われなかった子どもたち。

見捨てられた命。

村の因習の中で、
なかったことにされた存在。

彼らの想いが、
時間を歪めていた。

ここはかなり良かった。

単純に、
「犯人を見つけて終わり」
という話ではなかったからだ。

兄の狂気は、
たしかに事件の中心にある。

でも、
この村に積み重なっていた罪は、
兄ひとりのものではない。

もっと古い。

もっと深い。

もっと救いようがない。

忌み子たちの存在によって、
この物語はただの殺人事件ではなくなる。

村そのものが抱えてきた罪。

生まれだけで理不尽に扱われた命。

その声にならなかった声が、
タイムリープという形で残っていた。

そう考えると、
この時間の繰り返しは、
ただの便利な物語装置ではなかったと思う。

誰かに届いてほしかった。

誰かに気づいてほしかった。

この夜を、
このまま終わらせたくなかった。

そんな想いが、
主人公を過去へ引き戻していたのだと思う。

物語はちゃんと完結する。そこはかなり安心できた

『虧月の夜』について、
これから遊ぶ人が気になりそうなポイントがある。

それは、
ちゃんと完結するのかどうか。

ここは先に言っておきたい。

ちゃんと完結する。

事件の真相は明かされるし、
主人公もただ流されるだけでは終わらない。

死んで、
戻って、
その中で得た情報をもとに、
突破するための条件を理解していく。

そして最後には、
自分の手でこの夜を越えていく。

タイムリープものは、
設定だけ広げて、
最後がぼんやりすることもある。

でも『虧月の夜』は、
そのタイプではなかった。

今回の事件は、
今回の事件としてきちんと閉じている。

続編を匂わせるような終わり方でもない。

だから、
クリア後に「結局なんだったんだ」とはならなかった。

ここはかなり安心できた。

終わりに|こういう番外編ADVも、おいらはやっぱり好きだ

『虧月の夜』は、
ちゃんと完結している作品だった。

事件の真相は明かされる。

主人公も、
ただ巻き込まれたまま終わるわけではない。

何度も死んで、
何度も戻って、
その中で少しずつ理解していく。

どうすれば、
この夜を越えられるのか。

何を選べば、
この理不尽な運命を突破できるのか。

最後には、
ちゃんと主人公自身が答えを掴んでいく。

そこはかなり良かった。

ただ。

きれいに終わったからこそ、
少しだけ続きを見たくなった。

今回の事件を経験した主人公は、
もう元の主人公ではないと思う。

受験勉強に悩んで、
人生に嫌気がさして、
少し自暴自棄になっていた少年。

でも、
昭和の寒村で、
ただ生きることすら難しい時代を知った。

理不尽に殺される痛みを知った。

村の因習に踏みにじられた命を知った。

それでも、
誰かを助けようとした。

茜のことを考えた。

自分が体を借りていた、
ミツルのことも慮った。

自分が現代へ戻ることだけを、
目的にしていたわけではなかった。

だからこそ、
現代に戻った主人公は、
きっと少し変わっている。

受験の大変さが、
急になくなるわけではない。

現実の悩みが、
全部消えるわけでもない。

でも、
あの夜を越えた人間として、
世界の見え方は変わっているはずだ。

おいらは、
そこから先の主人公を少し見てみたい。

成長した人格を持った主人公が、
また何らかの別の次元に巻き込まれる。

別の時代。

別の場所。

別の事件。

そこでまた、
今回の経験を活かして、
誰かを助けようとする。

自分だけが助かればいい、
ではなく。

目の前の理不尽に、
ちゃんと向き合おうとする。

そういう主人公の姿を見てみたい。

もちろん、
今回の事件は今回の事件として、
きれいに閉じている。

無理に続編を匂わせる終わり方でもない。

そこは安心できるし、
作品としても誠実だったと思う。

でも、
だからこそ想像してしまう。

この夜を越えた主人公なら、
次はどんな事件に向き合えるのか。

あの経験を持ったまま、
どんな選択をするのか。

『虧月の夜』は、
昭和の寒村で起きたタイムリープホラーADVだった。

でも、
おいらにとっては、
ひとりの主人公が、
理不尽な夜の中で生きる意味を掴み直す物語でもあった。

だから、
この物語がちゃんと終わったことには満足している。

それでも。

成長した主人公の、
次の事件を見てみたい。

そう思えるくらいには、
この作品の夜は、
おいらの中に残っている。


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